修司の扉
寺山さんとの思い出 その1


1969年1月に演劇実験室「天井桟敷」に入団した私は在団3年半余りで寺山さんとのツ−ショットはこの1枚の写 真だけである。場所は当時、渋谷にあった旧天井桟敷館喫茶室。季節は冬であった。 某新聞社による新春特別号「故郷論」について語った時である。前年、6月に初めての海外公演を終えた劇団は私もまだ研究生の身であったが参加させてもらった。 「海外に行きますと、どちらから?と聞かれますと、ジァパンとかジァポンとかでいんですね。国内だと例えば東京でどこの出身ですかと尋ねられると秋田県ですと答えればそれですむ。県内で言われたら大館市です。もし市内で同じ事を聞かれたら下川沿出身です。このように次第次第と自分の領域が狭まってゆく。その狭まった最も窮屈な場所が故郷と呼ばれるような気がしますが・・・・」 「うん、今の話おもしろい」 はじめて寺山さんに誉められた自分にとっては記念すべき写 真ではあるが、後にも先にもこれが最初で最後の寺山さんの誉め言葉であった。

 

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