修司の扉
寺山さんとの思い出 その19


劇中に登場する「裁判官」の仮面である。仮面だけは各自海外公演のときも往復持ち運びであった。私は「夫」役で下駄 をかたどった仮面であった。 思い出した。長髪で真っ赤な長袖のTシャツ姿で一見ヒッピー風だった私は香港空港に降り立った時、突然別 室に呼ばれ持ち物検査を調べはじめられた。当然ながら下駄の仮面が出てきた。仮面 の素材は発砲スチロ−ルでできていた。意味は全く判らなかったがどうも「この仮面 の中が怪しい、きっと中に薬物が隠されているに違いない」そう言っているような気がした。すぐに警官が到着、その大切なお面 を砕こうとした。それだけはやめてくれ!私は懇願し必死なってドイツ公演のパンフレットに載っている自分の顔写 真を指差し「ME! ME!」と連発し演劇人であること強調した。結果的にお面 は無事であったが一晩空港に軟禁状態にされた。のち、香港へ行く機会があったが「あそこだけは行きたくない」私は即座に断った。

 

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