青森県立平内高校創立20周年朗読劇
『テーブルの上の荒野』


「参加」と「創造」をテーマに、すべての平内高校生徒がハートフルにお届けする、鬼才・寺山修司の世界

【 作 】寺山修司
【構成・演出】佐々木英明
【音 楽】J.A.シーザー 光真 歩
【美 術】藤田真紀子
【出 演】昭和精吾 福士正一 大船滝二 平内高校生徒諸君



【日時】9/18(土)午前10:30開場・開演
【入場】無料
【協 力】創芸企画 伊藤一郎(劇団支木)吉田良一
【お問合せ】tel:0177-55-2333(平内高校)




愛と孤独


           血と暴力






「演劇という名の罠」 「テーブルの上の荒野」上演にあたって
  佐々木英明




寺山修司は昭和58年5月4日、47歳の若さで亡くなりました。
昭和58年というと、今の高校一年生がこの世に生まれ落ちた年でもあります。早いものです。あれから、もう16年が過ぎたのです。ぼくにも高校一年の子供がいます。16年という月日の長さがどれくらいの長さなのか良く分かります。こどもの成長の節目節目を思い出すたび、ぼくは寺山修司の死の時間の長さに驚かされます。
寺山修司は俳句、短歌、演劇、映画など様々なジャンルを余りにも早すぎる速度で駆け抜けて行った前衛詩人です。その多岐にわたる活躍をどう呼べば良いのか、困り果てた記者が「職業は?」と質問すると、ただ一言「寺山修司」と答えたというエピソードは有名です。また、このエピソードが示すように、寺山修司はユーモアの大天才でもありました。今日、若い人たちの間で異様なほどの高まりを見せている「寺山ブーム」。それもこの寺山修司の多様性、そして当意即妙の機知と無縁ではないはずです。
さて、朗読劇『テーブルの上の荒野』です。タイトルは寺山の同名の未刊歌集から拝借しました。しかし、内容は歌集とはまったくことなるものです。この台本は平内高校創立20周年記念演劇教室のために、あらたに書き下ろされたものです。寺山修司の短歌や詩を中心に、かつて寺山が主宰した劇団「天井桟敷」で上演された名場面やロック音楽などで構成されています。演劇は再現のきかない芸術です。今や伝説と化した「天井桟敷」の舞台。1960年代末から70年代にかけての時代の気分とアンダーグラウンドシアター・シーンの熱気を感じ取っていただけたらと思います。ここに象徴されるのは高校生の親の世代の青春です。
しかし、今回の公演の主な目的は、その内容にではなく、むしろ高校生たちが自分たちの手で芝居を作り上げるという、その形式にこそあります。寺山修司はテクストにすぎない。「参加」と「創造」をテーマに、寺山修司というテクストを得た高校生たちがどのような自己表現を獲得するか、そこに至る芝居作りの過程そのものが目的なのです。
自分とは考えも年令も違う多くの他者に交じって、ときに反発し、ときに妥協し、みんなでひとつのものを作り上げるのが演劇という芸術の醍醐味だろうと思います。昨日まで名前も知らず、言葉を交わしたこともない人たちとのあいだに、気がつけばほのかな友情がめばえていたとしたなら、それこそが寺山修司が仕掛けた「演劇」という名の罠。

未刊歌集『テーブルの上の荒野』の扉にフォスターの言葉が引用されています。
「もしも友情か国家かどちらかを裏切らなければいけないときが来たら、私は国家を裏切るだろう」
さあ、平内高校生諸君! いつの日か裏切るべき国家を持つために、今は劇の中に大いなる友情を育もう。








佐々木英明(ささき・えいめい)
青森高校卒業、現在・平内市在住。詩人。映画「書を捨てよ、町へ出よう」 主演男優。




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