TEXT:「初演・台本」より
■この作品は、多数の出演者が「リング」という舞台の上と下とで対峙し、即興劇の部分も多く含んだ、実験的な演劇である。寺山自身が『音楽劇』と銘打ったとおり、随所に歌、踊りが設定されている。
■8つのシーンからなるこの戯曲は、15人の出演者が、入れ替わり立ち替わり様々な役柄を演じることで、人数より多くの役が、舞台上に現れうる構造になっている。
■1969年(昭和44年)天井桟敷第9回公演として初演。演出:萩原朔美、美術:及川正通。
■1984年(昭和59年)にはパルコスペースパート3にて、再び演出:萩原朔美、美術:日比野克彦で上演。出演者には、昭和精吾はもちろん、MIE、巻上公一、若松武、高見恭子など、また日比野も俳優として参加、『アメリカ』を朗読する。
■この作品を上演することは、天才劇詩人・寺山修司の言語世界を、自らの肉体として記憶することを決意する昭和精吾の、十五年に及ぶ【寺山修司研究】のひとつの挑戦と言えよう。
■「初演時のおもいで」昭和精吾
初演台本 卜書きより抜粋
中央にボクシングのリングがある。
このリングは劇の展開によって構成舞台として用いられる。マットを立てると、裏にコニーアイランドを思わせる原色のイラストレーションがえががれてある。他にラウンド・ゴング一台。リングサイドには肉体派のボディビルダーの実物を上まわるハリボテが、頭からすっぽりと星条旗をかぶって立っている。劇はすべて、このリングの中で行われ、俳優たちはリングを降りると冷やかしと中傷と、そしてリズムアンドブルースのコロスにかわる、というのがこの作品における<ゲームの規則(ルール)>である。
俳優は十五人、彼らはそれぞれの役柄に扮しては、いるが他に幾つかのカツラ、衣裳などをセコンド・コーナーにかけてあり、リングから降りてきて、別人に扮装してまたリングに上がってゆく、ということを繰返す。これは別のことばで言えば音楽劇というよりは、スピリチュアル・ラリー<魂の集会>の実践である。俳優たちは「演ずる」のではなく、リングの上に「現れる」のであるから、このラリーに勝ち抜くためには、自分の言葉を、暴力としての言葉を持つべきである。
「やがて誰もが十五分ずつ世界的有名人になる日がやってくる。」 アンディ・ウォーホール
- 登場人物
- 日本人
- アメリカンフットボールの選手
- ジーン・ハーロウ
- 詩を読む男
- グラマーな娼婦
- 西部劇の主人公
- 反戦運動家
- 女装の男
- アデノイドの保険外交員
- 少女
- 女教師
- 「暴力教室」生徒4人
- ベトナムの近くで、の少女
- 大学キッド
- 父親ビル
- 母親ジェーン
- 解説者
- ホイッスラー
- 男5人
- 女5人
- 皮ジャンパーの男
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